【寄稿】古希を過ぎての宇宙開発スタートアップ

平方洋二(74076)

1992年に独立し、IT及び地理空間情報システムを提供する会社を28年間経営してきたが、2021年に宇宙関係の仕事をどうしてもやりたいという一心で、宇宙開発ビジネスを行う2番目のスタートアップ企業を設立し、九州工業大学との共同研究開発によるIoT超小型衛星 “MicroOrbiter-1”を開発した。

当社衛星は、2024年3月22日にフロリダから打ち上げられたSpaceX社の貨物運搬ロケットFalcon-9 #30で国際宇宙ステーションに届けられ、日本実験棟のKIBOから規模が似ている他社の衛星と共に4月11日午後7時40分無事に地球低軌道に打ち出された。翌日の4月12日に衛星から最初のビーコンを受信し正常に飛行していることが確認され、2年を費やした衛星開発が素晴らしい感動によって報われた。

当社初めての超小型衛星”MicroOrbiter-1”は、地上端末装置からの微弱センサー信号をLoRa変調方式により920MHzバンドで受信し、地上ユーザーに中継することを特徴としている。これにより陸上通信網からはずれた所にある離島、海上のブイ、レジャーボート、あるいは漁船での各種の環境センサーデータや位置情報、また緊急時のSOS信号等を、衛星を中継して低コストで地上のユーザーが受信することを可能にする。また陸上通信網があまり発達していない発展途上国や紛争地域では上記のような衛星通信システムを低コストで素早く構築する事が可能となる。

古希を過ぎてからの宇宙開発スタートアップは遅過ぎたかもしれない。しかし7~8年前はドローンを使った地理空間情報システム開発に没頭しており、今からどこまでやれるかは未知数だが、仲間と一緒に宇宙開発をやるのは楽しいし今しかない。未知の分野に乗り出すのは無謀だが、知りたい見たいという好奇心は抑える事が難しい。

九州工業大学での弊社衛星のお披露目式。「MicroOrbiter-1」を手にしているのが平方です。
(左)平方、(右)当社技術責任者モムニ・ファード
4月11日に行われたISS日本実験棟KIBOからの当社衛星の地球低軌道への放出の瞬間です。
同規模の他社衛星との合同放出でしたが手前が当社衛星です。写真には宇宙飛行士帰還用のSOYUZ宇宙船が映っています。
目次