【東京本部】俳句同好会
谷口一郎
欄干の朱を塗りかへて花を待つ
葉桜や白寿めざせと友の声
花祭り化粧の厚き稚児の列
お彼岸や常と変らぬ多摩の駅
春水のせせらぐ音や御霊堂
林三平
万物に覚醒の兆し山笑ふ
陽炎や舞殿に出ず「静御前」
トランプの揺さぶる世界春嵐
春泥に思ひは飛びし戦火の地
春眠を楽しむ吾に猫添ひ寝
近藤陽明
松江城石橋潜るこたつ船
地のぬくみ伝はる足裏青き踏む
船笛の響く一湾春浅し
脇腹を削がれし山も笑ひけり
海の青膨らむ海峡春近し
山田良男
紅白の梅花の下で言葉なし
田おこしや時節到来気が付きし
静けさや名残り桜をひとり観る
風下の梅香に暫し立ちつくす
城跡に武者の面影桜舞う
木田俊治
折からの風をまとひて大枯木
同窓会学食にして秋日和
凛として緑袴の卒業子
霾るや鳴門海峡薄曇る
若布刈舟観潮船の波に堪ふ
古田陽久
渦潮の鳴門の海の桜鯛
万博で歌う第九や春の雨
オリーブの歌や小豆島の春の風
霞みたる瀬戸大橋や鷲羽山
句碑巡る金刀比羅宮や春の朝
野地邦雄
玲瓏と威をはる富士や春の雲
句に遊び弾むえんぴつ梅の花
梅東風に髪の梳かるる心地かな
浅春の白湯の甘さや利休の忌
韮粥の小ぶりの鍋をあふれさす